23. リングで区別
前回のブログで紹介した他にも、東南アジアのケンサキイカ属(Uroteuthis 属)にはヤセケンサキイカ(U. singhalensis)もいます。この種は、名前のとおりケンサキイカが痩せたような体型で、触腕も細く、見た目で別種であることが分かります。
しかし、他の3種、ケンサキイカとヒラケンサキイカ、アジアケンサキイカはちょっと見では区別がつきません。もちろん、厳密にはミトコンドリアDNAで調べるのですが、現場でサンプリングする時にこの方法は使えません。なので、とりあえずは吸盤のリングの形状で同定します。イカはタコと異なり、吸盤にリングがついています。そして、種によって形状がはっきり異なり、それぞれを区別する特徴になる場合があります。特に、触腕のすぐ横にあるやや太めの腕(Ⅲ腕大吸盤角質環)のリングによる同定が、この3種のUroteuthis 属を簡易的に同定するのにはぴったりの方法です。
まず、すぐわかるのはヒラケンサキイカのリング。鋭い牙が円状にならんでいて、拡大鏡でみると恐ろしいくらいです。この種は体型も大きくなるので、イカ男は個人的にケンサキイカ属のなかでは一番強暴というイメージをもっています。さすが、chinensis!、と言ってはいけませんね。
次は、アジアケンサキイカのリングは、ヒラケンサキイカのリングを見た後では、ちょっと笑ってしまいます。すきっ歯(空隙歯列)のようだからです。この種は小さめでぽっちゃり型なので、このリングを見るたびにバカボンのパパを思い出します。
最後は、ケンサキイカのリングです。これは特徴から判断するというより、他の2種とは違うということから出発して、端正な櫛状のフォルムという点で納得します。ハーモニカのリードのように見えますが、他に何かいいたとえはないでしょうか?
とは言いながら、現地の市場などで直径1㎜に満たないリングを摘み取って、拡大鏡で観察するのはとても大変です。手や拡大鏡はイカの墨や粘液で黒くベタベタ、変な日本人に商品をいじくりまわされて店の人も迷惑そうです。狭い通りを買い物で行きかう人の邪魔にもなります。結局、適当な量をざっくり買って、あとで同定することになります。ある時、ベトナム(ニャチャン)の魚市場で同じようなサイズのイカ17個体を適当に買ったところ、ヒラケンサキイカが7個、アジアケンサキイカが6個、ケンサキイカが2個、ヤセケンサキイカが2個体でした。南シナ海はイカの宝庫だなあと思いました。
いつも、この角質環での種判別の記事を参考にさせて頂いております。
ヤセケンサキイカは見た目で判別できるとの事ですが、角質環にもヤセケンサキイカならではの特徴はあるのでしょうか?
ご質問ありがとうございます。
ヤセケンサキイカのリングはうっかり撮影するのを忘れてしまいました。ヤセケンサキイカは他のUroteuthis属の個体と比較できれば、識別するのは容易だと思いますが、単独の場合は少し迷うかもしれません。
リングの形態は『新編 世界イカ類図鑑 ウェブ版 - 全国いか加工業協同組合』に図がありますので、参考にしてください。https://www.zen-ika.com/zukan/pdf/cs189.pdf?idx=1
ただ、ケンサキイカとかなり似ていますねえ!