10. 主権者はだれ?

今年2月に財務省から2022年度の国民負担率が47.5%になる見込みとの発表がありました。国民負担率とは、財務省のホームページによると、「租税負担率と社会保障負担率の合計」で、租税負担とは個人が納める住民税や所得税、企業が納める法人税など、社会保障負担とは労使で分けあって払う年金、雇用保険、介護保険などの保険料です。これを受けて世間では、「江戸時代の五公五民と同じ」などと嘆きの声があがりました。

 

日本大百科全書(ニッポニカ)によると、 五公五民とは江戸時代の年貢率を表現したことばで、収穫米の5割を年貢として上納し、残り5割を農民の作徳米とすること。大石久敬の『地方凡例録』によると、享保年間(1716~36)までは四公六民で、以後は検見法の実施による五公五民になったとされるが確かではなく、実際の年貢率も地味(ちみ)・作柄や地方によって異なっていたようです。さらに『豊年税書』によると、田畑1町(約1ヘクタール)を経営する5人家族の場合、四公六民でも年1石5斗の不足となり、三公七民でかろうじて生活が成り立つようで、重税に苦しむ農民は隠田や逃散、さらには年貢減免を要求する一揆を起こすこともあったといいます。

 

本来であれば、我々も政府に対して大規模なデモをおこなってもよさそうですが、その気配はまったくありません。なぜでしょうか。理由はいろいろあるのでしょうが、結局、これ以上の国債発行を主張すれば“将来世代からの借金”と批判されるので、仕方なく重税に耐えているのだと思います。

 

一般的に国債は「国の借金」と言われていますが、以前ブログで説明したとおり、国債は国庫債券なので、あえて「借金」というならば、債務者は政府ということになります。なので、日本国に借金があるのではありません。現在発行されている日本国債の問題は、徹頭徹尾、国内問題です。すると当然、債務者の向こう側には債権者がいるはずです。誰でしょうか?それはもちろん、国民です。つまり、国民が政府を信任してあげる一方で、政府は国民に対して「借り」ができるわけです。さて、政府はその信任をもとに国債(貨幣)を発行し、公共的な事業を行います。インフラが整備され、医療や社会保障が充実し、誰もが教育を受けられるようになると生活は豊かになり、国民は政府を支持し、信任します。この正の循環をうまく回すことこそ、政府の役割、つまり国民からの「借り」を返すことになるのです。というより、そのために我々は政府をつくったはずです。つまり、国債発行は、主権者から信任を得た政府が貨幣を流通させて経済を活性化し、主権者の生活を豊かにするという目的でなされるのであって、評価は発行数量ではなく、主権者の生活の豊かさや満足度で測られるべきです。国債の問題について、しばしばマスコミで「市場の信認が…」などと説明されますが、重要なのは国民(主権者)の信任があるかないかです。その点で我が国に政府が誕生して以来、着実に国債発行額が増加しているということは、長期的にみて、政府に対する信任が安定的に継続しているといえます。膨大な国債発行額は、近代国家が成立してから約150年、日本政府が国民から支持を受けた歴史の結果なのです。

 

ところが、近年国債の実質的な発行額が減少しています。現在でも多額の国債が発行されているように報道されていますが、国債償還費にあてられる国債発行が多いことを忘れないでください。国債を「国の借金」だと勘違いして、国債償還(借金の返済?)など無意味なことをやっているのは日本だけのようです。

 

このままだと我々の世代は、子孫のために公共資産を残してくれなかった怠け者たち、と評価されることになるでしょう。しかし実際は、仕事をしたくても適当な仕事が少なかっただけですよね。一方、政府は、国民に仕事の機会を与えることを大きな役割としています。であるならば、この状況は、日本国憲法第27条『すべての国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ』に抵触しているのではないでしょうか。しかも、その仕事の賃金は、「健康で文化的な最低限度の生活(同法第二十五条)」を実現するような金額でなければなりません。さらに、不幸にして勤労の義務を果たせない国民に対しても「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない(同法同条)」のです。ここでは「国」と書かれていますが、具体的には政府のことです。政府は国民によって変えることができます(革命ではありません。革命では主権者が変わります)。なぜなら、国民が主権者だからです。政府が自ら態度を改めないのであれば、主権者が改めさせるべきです。江戸時代の百姓は一揆などの非合法的手段をとらなければなりませんでしたが、我々には選挙権も被選挙権もあります。座して死を待つことはありません。子孫を悲しませないために、いますぐ民主制度を最大限に利用しましょう。

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