26. 新たなる懸念?

スルメイカ24「新たなる希望」で、スルメイカ資源復活への可能性を示唆しましたが、あれから3か月、この希望は大きくなったのでしょうか。検証したいと思います。

 

希望の根拠は、黒潮大蛇行終焉の兆しが現れたからでした。スルメイカが好適産卵海域へ回帰するためには対馬海峡を西から東へ渡りきって、九州西岸へたどり着かなければなりません。つまり、対馬暖流を横断する必要があります。しかし近年は、対馬暖流の勢力が強くなって、渡るに渡れぬ状況になっているのでした。水温が上昇しているとはいえ、対馬海峡西側(西水道)の水温はまだまだスルメイカの成熟と産卵、ふ化、生残にとっては低い状態です。これが資源減少の大きな原因になっているとイカ男は考えています。

 

対馬暖流の勢力が増加した理由の一つとして、黒潮が東シナ海大陸棚や日本列島に接近しているからという研究報告があります。そのために黒潮から派生して日本海へ向かう流れ(対馬暖流)が強化されているのですね。また、黒潮が大陸棚や列島に近づくと流れが遅くなり、蛇行が発生しやすくなるそうです。なので、一見無関係にみえる対馬暖流の勢力増加と黒潮大蛇行は関連しているというのです。

 

というわけで、5月に水産庁が黒潮大蛇行終息(の兆し)について報じたとき、イカ男は喜んでブログに書いたのでした。しかし、7月31日に国立研究開発法人 水産研究・教育機構が公表した『2025年度 日本海スルメイカ長期漁況予報』によると、漁況は「どの海域も前年および近年平均を下回る」とあり、また北海道総研・函館水産試験場が行った道南周辺の海域で調査でも、分布密度は非常に低く、大きさも過去最低の水準だったようです。

 

そして、さらに不安な報告があります。JAMSTECの『黒潮親潮ウォッチ』によると「伊豆諸島付近と九州・四国沖に大きい蛇行があります。東の蛇行(A)は蛇行こそ大きいものの、黒潮大蛇行らしい蛇行ではなく、長期には保たれなさそうです。(しかし、)西の蛇行(A’’)は東に進み、大蛇行的になる可能性」があるということです。

JCOPEによる推測値(黒潮親潮ウォッチHP)

 

実際、日本海側でも気象庁HPの『対馬暖流の勢力の時系列』によると、今年1月から4月に急減した勢力が5月から7月に急増して、前年・前々年とほぼ同じレベルに回復しています。まさに黒潮蛇行の消長と同期しているように見えますね。

対馬暖流の勢力の時系列(気象庁HP)

 

とても残念な結果ですが、問題なのは、スルメイカが産卵回帰する秋から春に対馬暖流の勢力が弱化してくれることです。そうすれば、好適な産卵海域に回帰できる可能性が高くなるはずです。ここまで資源が減少してしまうと、そう簡単にもとには戻らないと思いますが、また美味しいイカを安く気軽に食べたいですね。

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