1. いかにしてイカ男となりしか

わたし(イカ男)は、九州大学大学院(総合理工学府)で大気海洋環境システム学を専攻し、海洋モデリングを学んでいる学生です。もともと、佐賀県で10年ほどケンサキイカの研究をしていたのですが、「50の手習い」(少しサバを読んでますが)を今さら始めた理由は、、、まずは下の新聞記事をご覧ください。

西日本新聞(2022年3月23日付)

要するに、海水温が変化すると同時に、海流の向きや勢いも変化し、イカの移動経路が変わってしまったのではないかという仮説をたて、これを検証するために、海洋モデリング技術を使って、漁獲量減少の原因解明をしようとしています。

新聞には「イカ愛が高じて」とありますが、実はイカはおろか魚も釣ったことがありません。料理をしたこともありません。県職員として働いていたころは、まちがいなく日本でいちばん魚介類の名前を知らない水産技師だったと思います。お魚教室などでは、子どもに魚の名前を聞かれはしないかといつも冷や冷やしていました。ただ、まわりの人から「イカ愛」度が高いと見られているのだとしたら、それはイカから選ばれたからか、それとも、イカに憑りつかれてしまったからかもしれません。

ケンサキイカの研究を始めた頃、さまざまな報告書や文献を読んで、イカの移動経路の仮説を立てようとしていました。かなりの情報量を頭に叩き込んで、日々悶々と考えていたとき、回覧されてきたいろいろな報告書を呼んでいた隣の同僚がふと、東京でもケンサキイカが獲れるんだ、とつぶやきました。その時、膨大な数のケンサキイカがいち団となって、黒潮のなかをどーっと泳いている画がわたしの頭を直撃しました。ちょうど、こんな写真のような映像でした。ひょっとしたら、その時、憑りつかれたのかもしれません。

わたしがなぜ「イカ男」なのかといいますと、それは万城目学氏の小説『鹿男あをによし』からきています。この小説は2008年にドラマ化され、玉木宏さんや綾瀬はるかさんらが出演していましたね。主人公は、奈良公園の鹿から選ばれて日本を救う役目を担うことになります。鹿は1800年間、大鯰による地震から人間を守ってきたという設定でした。この譬えでいうと、強力な捕食者であると同時に多くの魚類にとって重要な餌生物であるイカ類は、食う食われるの生態系のなかで重要な役割を果たし、豊かな生態系を支えているといえます。日本周辺で多くのイカ類が減少しているのだとしたら、何らかの理由で海の生態系はいま危機的な状況になっている可能性があります。

つまり、烏賊使我語海(イカ我をして海を語らしむ)なのです。

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1. いかにしてイカ男となりしか” に対して3件のコメントがあります。

  1. 橋本 孝 より:

    素晴らしいです。確かに海流との相関はあると思います。以前はそれこそ大量に獲れていたスルメイカがあんまり見なくなりました。「イカ男」さんの独特の感性と情熱でその一端が解明されることを期待しています。がんばってください。

    1. ika-otoko より:

      コメントありがとうございます。準備が整ったら、「スルメイカ」も始める予定ですので、楽しみにお待ちください。

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