28. フィリピン再挑戦

先月2月23日から25日の3日間、フィリピンでケンサキイカを目的に、イカ類(Uroteuthis属)のサンプリングを行ってきました。具体的には、ルソン島の北西部にあたるカガヤン州の北部沿岸でイカを購入したのです。以前にもブログで紹介した再挑戦でした。

まずはカガヤン州の州都トゥゲガラオ市にある政府水産管理部局の出先機関(Bureau of Fisheries and Aquatic Resources Region 2)の所長Angel博士と、担当者であるEmma博士にあいさつ。Angels所長はいきなり「ワタシはテンシです」と自己紹介。実は7年間東京海洋大学で学び、ちょうど東日本大震災のとき学位をとられたということで、私の下手な英語より、日本語で話す方がよっぽどコミュニケーションがとれました。一方、Emma博士は3年間高知大学で学び、学位をとられたそうです。

Angel所長(左)とEmma博士(イカ男の「ANGELS」の赤シャツはまったくの偶然)

一昨年フィリピンでケンサキイカのサンプリングをすることを決心したものの、カウンターバートをどの機関にするか、誰にするか、途方にくれていたところ、北海道大学に出張した時、生協の本屋で『黒潮源流シーカヤック遍路道』という本を見つけました。パラパラとページをめくったところ、フィリピン海のごく沿岸では、小さなイカが網ですくっても獲れると書いてあります。これは当時高知大学の黒潮圏海洋科学研究科の教授であった山岡耕作氏がフィリピンの東部沿岸をシーカヤックで調査した時の記録でした。イカ男は、ピンとくるものがあって、さっそく高知大学に連絡したのですが、氏はすでに退官されていて、しかもご病気ということでした。そこで、同研究科の担当教授に無理をいってフィリピン政府のEmma博士を紹介してもらったのでした。

市場にて(手前から3番目がイカ、当日出荷はこれだけ)

現地ではまるでキャラバン隊のように、カガヤン州の北部沿岸にあるSanta AnaやAparri、Gonzaga、Buguey、Claveria、Santa Praxedesなどの街にある魚市場を公用車でまわりました。Emma博士や専属運転手とともに常に数人の研究員に同行いただき、サンプリングは無事に終わりました。イカは沿岸の研究所で解剖し、平衡石を摘出し、遺伝子分析のための組織片を採取しました。研究所の職員の方々がギャラリーとして集まってくれたので、即興の講習会になりました。なかにはうまく平衡石を取り出す人もいて、フィリピンでも平衡石を用いた研究が進めばいいなあと思います。

平衡石を取出し中

ただ、あいにくの荒天続きで漁業者のほとんどが出漁せず、限られた漁獲物からのサンプルでした。この時期のフィリピン北部海域は一年でもっとも気温が下がり、雨や風の日が多いそうです。実際、出漁できる日が少ないので、政府は2月に禁漁期間を定めることが多いということでした。フィリピンで使用されている漁船は、船外機をつけたごく小さな船で、とても過剰な漁獲をできるようではないですが、Angel所長によると、爆発物をつかった漁法や未報告の漁獲物など、いわゆるIUU(Illegal, Unreported and Unregulated)漁業が多く、それを取り締まる必要があるとのことでした。

典型的なフィリピンの沿岸漁船

フィリピン政府は過剰な漁獲を防ぐというよりも、まず世界標準の漁業ルールを地元漁業者に守らせることを目的としているようです。その点で、漁業モラル(moral)に対する関係職員のモラール(morale)は高いなあと感じました。

  • 山岡耕作『黒潮源流シーカヤック遍路旅―八幡暁、かくのたまふ―』南方新社、2021年

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