31. イカ釣りさんの情報を検証

最近、Facebookグループの「イカメタル楽しもう」をみていたら、山陰から北陸にかけてケンサキイカがよく釣れるという投稿が多いようです。しかも、小型のイカが多いとのこと。近年はケンサキイカが減ったと言われてきたので、嬉しいことではありますが、なぜ?という気もします。それで、遊び半分(半分はまじめ)で海流の変化などを粒子追跡実験で簡単に調べてみました。九州大学応用力学研究所のDREAMS_Mのデータを使い、2008、2013、2018、2023年の各1月1日に台湾北部沖(東シナ海南部)から1万個の仮想粒子を30m深にリリースしたところ、200日目(7月20日頃)の分布が下の図です。

各年1月1日に×点からリリースし、200日目。太平洋側138E以東はデータなし。

 

台湾北部沖からリリースした仮想粒子の多くは黒潮によって北東に流され、鹿児島南西沖で太平洋方向と対馬海峡(天草海含む)方向へ分かれます。対馬海峡を通過した粒子は対馬暖流によって日本海へ広がっていくことになります。5年ごとの分布図をみると、近年になるほど北へ流されています。対馬海峡に残っている粒子が明らかに少なっていますね。その分、北へ流れたということです。まだ遊びの段階なので定量的な分析はしていませんが、かなりの粒子が北緯40度以北にあります。では、どのくらい早く流されたのでしょうか。何を基準にするかで結果は異なるのですが、とりあえず最北の粒子が北緯40度の手前に達したときの図を示します。粒子分布密度の大小はあれ、おおよそ分布範囲は似ています。

 

各年1月1日に×点からリリース。太平洋側138E以東はデータなし。

 

2023年は他の年に比べて、10日から35日程度早いことが分かります。同じ頃にふ化した個体であれば、早く釣れば基本的に小型です。イカ男の経験では、30日で5㎝くらい大きくなるようです。実験した数が少ないので、まだ自信をもって主張することはできませんが、近年対馬暖流の勢力が強化され、山陰から北陸へケンサキイカが早めに来遊するようになった可能性があります。早めに来遊するので生残率が高く、しかし小型なのでしょう。ただ、気になったのは、近年になるほど、太平洋側へ移動している粒子が多くなっていることです。これも実験数が少ないので断定はできないのですが、黒潮が強化され、多くのイカが太平洋側へ流されている可能性があります。親潮海域の縮小とともに、三陸でケンサキイカが釣れるようになったことの要因かもしれません。期せずして、イカ男の大胆すぎる予想を実験で補強する結果になりました。実際このようなマクロ的な海況と漁獲量の変化を結びつけることは容易ではないのですが、他に研究するヒトも見当たらないので、せいぜい頑張りたいとおもいます。

 

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